スループットとは?目安や測定・改善方法を解説

スループットという言葉は聞いたありますか。オンラインゲームをやっている時に、動作が遅くなったり、回線が途切れてしまうことはありませんか?それは、ネットワークの回線状態が安定していないせいかもしれません。回線状態を知る上では「スループット」という値が1つの指標になります。動作が不安定な場合、理論スループットが低い機器を利用していたり、実効スループットが一時的に低下していることが原因である可能性があります。この記事では、スループットの定義について説明し、スループットの計測方法と、その値が表す意味についてご紹介します。

スループット(throughput)とは

スループットという言葉の定義を解説し、ネットワークの世界でのスループットの意味やその重要性についてご紹介します。

スループットの意味

まずは、様々な分野で利用されるスループットという言葉の定義とネットワーク分野におけるその意味について解説します。

一定時間の作業量(処理性能)

そもそもスループット(throughput)とは、英語で「単位時間あたりに処理できる量」のことを表します。日本語では仕事率と同じ意味であり、システム性能やパフォーマンスを評価する上で重要な指標となります。

ネットワークの分野においては、単位時間あたりに転送できるデータ量の事を指します。つまり、1秒間(=単位時間)でどのくらいのデータを送受信することができるのかという量の多さを表しています。

また、スループットはよく「回線の太さ」と言われることがありますが、これは実際のケーブルの太さを表しているのではありません。ネットワーク回線を水の流れるパイプに、データをパイプ内を流れる水に例えた場合に、パイプの太さと水が流れる量の多さが比例するためです。

スループットの単位

データ量の最小単位として、bit(ビット)というものがよく利用されています。スループットは1秒あたりのデータ転送量であることから「転送データ量(bit) ÷ 時間(s)」で表すことができるため、その単位はbit/sとなります。
また、英語では bit per secondと読むため、略して「bps」と表記します。

理論スループットと実効スループット

スループットには、理論スループットと実効スループットの2種類のタイプが存在するため、その違いについて理解することが重要です。

理論スループットとは、文字通り機器仕様の理論上で算出されるスループットの事を表します。つまり端的に言えば、その機械で出せる最大のスループットということになります。機器を購入する際に仕様書や説明書に記載してあるスループットは理論値であることがほとんどです。

実際にネットワークを利用すると、転送できるデータ量というのは様々な要因で変化します。この実際に転送できるデータ量を計測し、単位時間あたりの値に直したものが実効スループットです。実効スループットは実際に機器をネットワークに接続して計測するものであり、環境によって大きく値が異なります。

スループットとレイテンシの違い

同じくネットワークのパフォーマンスを表す値として、レイテンシという言葉があります。レイテンシとは、何かに対して要求を行った場合に、その応答が返ってくるまでの時間のことで、ネットワークの世界だけでなく、幅広い領域で利用される一般的な言葉です。

レイテンシは以下でも解説しています。

スループット値の目安は?高スループットとは

オンラインゲームを快適にプレイする上では、理論スループットと実効スループットの両方を考慮し、高スループットの状態を維持しておく必要があります。

スループットの目安は20Mbps~30Mbps

オンラインゲームで必要となるスループットの目安についてご紹介します。オンラインゲームはその特性上1つの転送データに含まれるデータ量はそれほど多くありません。そのため、オンラインゲームをプレイするだけであれば実効スループットが20~30Mbpsもあれば十分です。

ちなみに、ゲームをダウンロードする時にはできるだけ大きなスループットである事が非常に重要となります。例えばファイナルファンタジーXIVでは60GBのゲームデータをダウンロードする必要があります。その時の実効スループットが10Mbpsの場合、ゲームをダウンロードするのに最短でも13時間程度かかる計算になります。

高スループットとは

高スループットとは文字通り実効スループットが高い状態であることを表します。また、オンラインゲームのネットワーク環境では、「高スループット 低レイテンシ」であることが重要であると言われています。これは、ネットワークの回線が太く、動作遅延の少ない状態であれば、安定してラグの少ないプレイができるためです。それには、実効スループットを高い状態で維持することが必要になります。

スループット値の計算式

前述したように、スループット値は「転送データ量(bit) ÷ 時間(s)」で表すことができます。例えば125MB(メガバイト)のデータを送信するのに100秒の時間がかかったとすると、そのスループットは125M × 8 bit ÷ 100 s = 10 Mbpsとなります。しかし、データの転送方式はアプリケーションの仕様や作りによって異なるため、あくまで参考値として考えることが重要です。

スループット値の測定方法

スループットの測定方法についてご紹介します。実効スループットを計測するにはある程度の量のデータを転送する必要があります。方法として最も簡単なのは、スピードテストを利用することです。これはスピードテストのサーバーに規定のデータ量を送受信し、その平均を算出することでスループットを計算します。

まず、Googleでスピードテストと検索し、一番上のインターネット速度テストの「速度テストを実効」を選択します。

Google SpeedTestは以下でも解説しています。

速度テストを実効

すると、自動的にデータ転送が開始され、スループットの実行速度が表示されます。この場合、データを受信する場合のスループットは低く、データを送信するスループットは標準的であることがわかります。

テスト結果

オンラインゲームでは提供するサーバーがゲームの状況を処理し、プレイヤーに転送する通信が多く発生します。そのため、ダウンロードする際の実効スループットが重要です。もしスループットが上記のように明らかに目安よりも低い場合は改善する必要があります。

スループット値が悪化する原因と改善方法

家庭のインターネット環境には実効スループットを低下させる様々な要因が存在します。例えば主な原因は以下です。

  • 複数機器の接続
  • 他利用者の利用状況

家庭ではゲームだけでなく、スマートフォンやPC、タブレットなどルーターに複数の機器が接続されています。その複数の機器でネットワークを共有するため、1つの機器で送信できるデータ量は少なくなってしまいます。また、そもそも家庭用のインターネットは複数の利用者で共有された回線を利用しており、他の利用者の利用状況に大きく影響されます。

そのため、それらの要因を排除するとともに、できるだけ大きな理論スループットの機器を選定し、常に安定した実効スループットを出せる環境を作っておく事が必要となります。それには、下記に注意すると良いでしょう。

1.理論スループット値が高いものを選択する

まず重要なのは、機器の理論スループット値が高いものを選択する事です。理論スループット値はその機器で出すことの出来る最大のスループットです。その値以上の実効スループットは出すことが出来ないため、機器の理論スループット値がボトルネックにならないように注意しましょう。

2.複数の機器で理論スループット値に差が出ないようにする

例えば、非常に理論スループット値の高い最新のルーターを購入しても、自分の端末とルーターの間の接続が古いLANケーブルでは意味がありません。ネットワーク環境全体として、古いLANケーブルで出すことのできるスループット値以上にはならないからです。
そのため、ケーブルやルーターの理論スループット値はもちろん、自分の端末のLANポートのスループットや、インターネットプロバイダーの回線速度などにも注意し、経路上で経由する様々な機器の理論スループット値を高い値で揃えておく必要があります。

3.複数の端末で同時に接続しないようにする

上記の2つは理論スループット値を高く保持しておくためにやるべきことですが、ここからは実効スループット値を高める方法です。
まず、実効スループット値は同時に回線に接続している人の影響を大きく受けます。そのため、オンラインゲームをやる時は他の端末を同じルーターに接続しないようにするのが良いでしょう。

4.他のプロセスを同時に実行しないようにする

実効スループットを低下させる大きな要因は、様々なデータが同時にやり取りされる事です。PCやPS4などの端末は複数の処理を同時に実行することが可能であるため、他のプロセスに回線が利用され、圧迫されている可能性があります。オンラインゲームをプレイする際には他のプロセスが完了してからにしましょう。

まとめ

この記事ではスループットの定義について確認し、その測定方法と目安についてご紹介しました。オンラインゲームのような小さいデータを数多く送るような仕組みのアプリケーションの場合は、スループット自体の値よりも、スループットを安定させることが重要となります。それには、理論スループットの高い機器を選定し、実効スループットを低下させない工夫が必要となります。