通信速度が著しく低下している場合、パケ詰まりと言われる症状が発生している場合があります。初めて聞くという方は、その対策もできていないことが多いです。本記事では、パケ詰まりと言われる症状について、どのような状態に陥っているのか、また具体的な対策としてはどのようなことをすればよいのか、ということを解説します。本記事を読んで頂くことで、パケ詰まりに対して基本的な知識が得られ、自分で対処することができるようになります。
snsや企業でパケ詰まりの現象が増加し、it時代のキーワードとして注目されています。
「パケ詰まり」とは?
パケ詰まりとは、「端末の送信速度が不足し、送信待ちデータが蓄積してしまっている状態」を指します。有線通信環境よりも、様々な外乱によって通信状態が悪化しやすい無線通信環境でよく発生します。
前提知識:ハンドオーバー
前提知識として、ハンドオーバーという言葉を覚えておきましょう。ハンドオーバーとは、「無線通信端末が、より通信状態のよい基地局へ切り替えること」です。この動作の間は、端末と基地局が通信経路を作り直している状態です。そのため、通信そのものは発生していますが、アプリのデータは送信されず、滞留しているので、パケ詰まりになります。
「パケ詰まり」が起こるとどうなる?
パケ詰まりが起こるとどうなるか解説します。具体的には以下の症状が発生します。パケ詰まりは端末の送信口が詰まることなので、その前後のプロセスで問題が発生します。
【パケ詰まりによって発生する症状】
・アプリがタイムアウトする
・アプリがいつまでも送信中のままになる
・新しく送信するアプリが、送信を開始できない
・送信を待っているサーバーが処理を進められない
・サーバーからの応答を待っている他のプレイヤーが処理を進められない
・サーバーから接続拒否される
「パケ詰まり」が起こる回線
パケ詰まりが起こる回線とは、すなわち通信経路上に問題が発生しやすい回線ということです。無線通信環境の方が、有線通信環境よりも通信経路上で外乱を受けやすいので、パケ詰まりが起こりやすいです。以下で、少し詳しく、個別に特徴を解説します。
無線電波(Wi-Fiルーター・WiMAX)
無線電波は、モバイルルーター・WiMAXにとって主要な通信経路です。これは空間中で、干渉・遮蔽・吸収などを受けて、信号が劣化します。その結果、ハンドオーバーや再送制御が発生しやすいです。また、通信速度は後述の有線回線のような1Gbpsが実現できることはほとんどありません。したがって、最もパケ詰まりが起きやすいです。
スマートフォン・iPhone
モバイル・スマートフォンも無線回線に属するのでパケ詰まりが起こりやすいです。ソフトバンク、ドコモの料金プランが、提供する4g、5gのネットワーク技術の品質がアクセスの集中要因で遅くなることがあります。
光回線
光回線における信号の伝送路は、石英またプラスチックであり、非金属なので電磁的影響を受けにくく、安定した高速通信が可能です。標準的な通信速度は1Gbpsなので、パケ詰まりは起きにくいです。
メタル回線(LAN)
メタル回線(LAN)は信号の伝送路が金属なので、そのままでは電磁誘導を拾ってしまいます。そのため、LANケーブルではより合わせることで自分自身の電磁的影響を打ち消しています。主に宅内の配線として利用されているので、強い電磁ノイズを受けるケースは限られています。標準的な通信速度は光回線と同等の1Gbpsなので、やはりパケ詰まりは起きにくいです。
「パケ詰まり」の原因5つ
パケ詰まりの原因とはどのようなものでしょうか?また、防止策はあるのでしょうか?ここでは、パケ詰まりが起きやすい無線環境を例に、原因を解説し、その後対策を解説することにします。原因について理解するにあたって、以下の発生経緯を把握しておくと、何が起きていてどうすべきなのか考えやすくなります。
【パケ詰まりが起きる経緯】
1.ユーザーが通信アプリを開始する
2.通信アプリがデータ送信をOSに依頼
3.OSがデータをパケットに分割して送信バッファに入れる
4.OSが送信バッファのパケットを通信経路に送出する
(※このとき、通信経路上の問題が発生しているものとします)
5.通信経路上の問題(ハンドオーバーなど)を検出し、解決までの間アプリのデータ送信が一時停止する
6.端末の送信バッファが消化できず、後続の送信待ちデータが入れない状況になる
(※これがパケ詰まり)
7.送信待ちデータを入れたいアプリは、タイムアウトしたり、ユーザーに再試行を促す。
原因1.電波信号の劣化
基地局が遠い場合など、端末が利用できる電波に充分な強度がない場合、そこに乗せるデータの信号も弱くなります。すると、ノイズによって正しい信号が覆い隠されてしまい、受信側で信号の再現処理が失敗しやすくなります。その結果、通信断やパケット損失がおきやすくなります。
原因2.事業者回線の混雑
事業者回線の混雑も、主要な原因の1つです。この場合、端末が利用できる帯域幅が減少します。その結果、一度に送出できるパケット量が減るので、パケ詰まりになりやすい状態になります。
原因3.事業者回線の速度制限
事業者回線の速度制限を課されている場合も、パケ詰りが起きやすくなります。契約データ容量の上限に達した場合、事業者側で、利用者間の公平性を維持するための措置として、通信速度が制限されます。低速な場合では、128Kbps程度まで低下します。このときも前項と同様に、一度に送出できるパケット量が減るので、パケ詰まりが起きることになります。
原因4.TCPのバッファサイズが小さすぎる
TCPの場合、送信待ちパケットを貯めるバッファ、および受信中のパケットを貯めるバッファのサイズは、アプリの設計によって異なります。この両方のバッファに適切なサイズがない場合、パケットが入りきらないことが増えるので、パケ詰まりになりやすくなります。
原因5.ハンドオーバーが発生しやすい場所
端末に届く電波が、複数の基地局から同じ程度の強度で届いている場合、ハンドオーバーが発生しやすくなります。また、複数の基地局の境界付近に滞在している場合も、ハンドオーバーが発生しやすくなります。その結果、データ通信が停止している時間が長くなります。
「パケ詰まり」の対策・解消法4選
パケ詰まりの対処法として、特に実施しやすい方法を挙げます。わかりやすくするため、前段の原因と対応する順番で解説します。
対策・解消法1.電波を拾いやすい環境づくり
電波を拾いやすい環境づくりを意識すると、通信状態が改善しやすいです。周波数が高い電波ほど遮蔽に弱いので、できるだけ遮蔽物がない場所で利用するべきです。利用回線の電波強度を、端末のアンテナ表示や専用アプリで確認し、より快適に利用できる場所を見つけましょう。
対策・解消法2.混雑時間帯を避ける
事業者回線が混雑している場合、直接それを改善することはできません。できるだけ利用者が少ない時間帯で利用すると、通信状態が改善されます。
対策・解消法3.通信速度制限されている場合は、無料Wi-Fiを利用する
事業者側で通信速度制限が課せられている場合は、無料Wi-Fiを利用することを検討しましょう。ただし、セキュリティが弱い公共施設の無料Wi-Fiよりも、商業施設の個室など、できるだけ傍受される恐れの少ない場所を利用するよう注意が必要です。
対策・解消法4.ハンドオーバーしにくい場所で利用する
ハンドオーバーしにくい場所で利用することも大事です。接続先基地局がわかる専用アプリや、キャリアの基地局情報を見て、地理的関係を把握しましょう。やや手間がかかりますが、よく利用する場所であれば、一度慣れてしまえば、それ以降難しいことはありません。また、宅内で複数のWi-Fiルーターを利用している場合も、一番電波状態が良いルーターのみに接続し、他のルーターは電波の周波数を変えるか、落としておきましょう。
まとめ
パケ詰まりは、送信する前にパケットを蓄えておくバッファがいっぱいになってしまい、送信待ちデータが滞留している状態です。その原因は、通信経路・端末・アプリなど、通信に関わる主要な箇所それぞれに存在します。ですから、特定の部分だけでなく、通信の仕組み全体の知識を増やすことが大事です。そのうえで、基本的な対処法を身に着け、実践すれば、より改善できる機会が増えます。ぜひ本記事を参考に、パケ詰まり解消に取り組んでみてください。